この記事では、吾峠呼世晴先生による「吾峠呼世晴短編集」のレビュー・感想を書いていきます。
「鬼滅の刃」の作者である、吾峠呼世晴先生の過去の読み切りを集めた短編集が2019年の10月から発売されています。
私はこの短編集の存在を知らないまま書店をさまよっていたところ、大好きな伊黒小芭内さん風の表紙に目が釘付けになりました。

え!!!伊黒さん!!?
「吾峠呼世晴」の名前を確認し、詳細は確かめもしないままレジへ直行。
結果、たくさんの人に届けたい1冊でしたので、あらすじや感想をまとめます。


「吾峠呼世晴短編集」の収録作品
「吾峠呼世晴短編集」には4つの作品が収録されています。
①過狩り狩り…JUMPトレジャー新人漫画賞佳作
②文殊四郎兄妹…少年ジャンプNEXT!2014年vol.2に収録
③肋骨さん…週刊少年ジャンプ2014年39号に収録
④蝿庭のジグザグ…週刊少年ジャンプ2015年21号に収録
それぞれの短編の内容や感想について、くわしく書いていきます。



「過狩り狩り」は、「鬼滅の刃」のもとになっていそうなお話です
「過狩り狩り」(かがりがり)の内容やあらすじ
舞台は明治・大正時代。人を喰う鬼が闊歩する時代。
無差別に人が襲われる事件が多発するも、警察は犯人の尻尾もつかめずにいた。
犯人は、人間の生き血を求める吸血鬼。
好き勝手に縄張りを荒らされた鬼の時川と珠世(たまよ)・愈史郎(ゆしろう)は協力して、その吸血鬼をとらえる計画を立てていた。
珠世や愈史郎の血鬼術で吸血鬼を見つけ足止めするも、時川がしとめそこねて苦戦する。
そこへ、盲目で片腕の剣士が現れる。
「悪鬼滅殺」の刀を持った盲目の剣士は、時川と珠世2人がかりでも倒せなかった吸血鬼をいとも簡単に倒してみせる。
この剣士こそが、過酷な選抜を生き延びた鬼狩りであった。
吸血鬼と剣士が戦っているうちに、時川と珠世・愈史郎は身を隠す。
剣士の鬼狩りの旅はまだまだ続く。
「過狩り狩り」(かがりがり)の感想
「鬼滅の刃」のもととなっている「過狩り狩り」。
珠世と愈史郎は、まんま「鬼滅」の2人です。
珠世さんがつぶやいた「狩りすぎれば狩られる」いう言葉が、タイトルにかかってくるのだなと思いました。
過狩り(狩りすぎるもの)=吸血鬼
過狩り狩り=主人公の鬼狩りの少年
タイトルはこのような意味だったんだなと、珠世さんの言葉で分かりました。
主人公の剣士は、寡黙でほとんど言葉を発しません。
炭治郎というよりは冨岡義勇さんのような雰囲気をもった少年です。
そして、珠世さんや愈史郎は、ほぼ「鬼滅の刃」と変わりないのですが、時川さんの容姿に驚きました。
時川さんは、おそらく「鬼滅の刃」でいうところの鬼舞辻無惨です。



時川さんより無惨様の方がずっとかっこいいですよー
「文殊史郎兄弟」(もんじゅしろうきょうだい)の内容やあらすじ
文殊史郎兄弟は、兄の聖正(まさただ)と馬畝(うまうね)の2人兄弟。
2人の仕事は、殺し屋。
弟の馬畝がとってきた仕事を、兄の聖正が受けるかどうかを判断する。
今回の依頼は、警察官である父を殺された静伽(しずか)。
母の形見の宝石や全財産の通帳をもって、半信半疑で文殊史郎兄弟に、父の仇をとってもらうよう依頼する。
ターゲットの邸宅は厳重な警備がしかれていたが、文殊史郎兄弟に敵はない。
文殊史郎兄弟は、体内に誰もが飼うという「虫」を孵化させて得た特殊な力の持ち主だった。
虫に変身して戦う弟と、音をあやつる虫を使う兄。2人はやすやすと、静伽の依頼を完了させた。
「文殊史郎兄弟」(もんじゅしろうきょうだい)の感想


わたしが「伊黒小芭内さん!?」と思った表紙は、「文殊史郎兄弟」の兄・聖正でした。
クールで表情がぜんぜん変わらないあたりや、黒髪、縦じまの服を好むあたりが伊黒さんの雰囲気を醸しています。
よく見ると、縦じまの服は聖正が大好きなピアノ柄でした!
「文殊史郎兄弟」は、連載も考えていたようで、あとがきには父や母、妹のキャラ設定が載っています。
なぜ虫を使えるのか、どうやって孵化させたのか、他の家族はどんなキャラなのかなど、気になることがたくさんです。
連載でも読んでみたい作品です。
「肋骨さん」(ろっこつさん)の内容やあらすじ
みんなに見えるものが見えず、みんなに見えないものが見えるアバラ(肋骨さん)。邪氣(じゃき)が見えるアバラは、取りつかれた人を助ける浄化師を生業としていた。
街で見かけた、髪に異様に執着する邪氣をたどっていくと、美しい髪をもつ娘たちが幽閉されていた。
命の恩人である善而(ぜんじ)に応えようと、自分を犠牲にして命がけで邪氣と戦うアバラ。
深く傷を負いながらも、なんとか邪氣を浄化することに成功する。
アバラは、「自分は価値がない」「いつ死んでもいい」と思いながらこれまで生きてきたが、助けた娘の言葉で、「自分を大切にする意味」を知る。
「肋骨さん」(ろっこつさん)の感想
アバラに助けられた少女が、まちがえて「肋骨さん」と呼んだことからついたタイトルだと思います。
脇役のひとりに、「文殊史郎兄弟」にも登場したマミコさんというキャラが登場します。
マミコさんは「愛児院」という施設の職員で、かなり気になる存在。
表情が見えないまま、子どもたちにキツイ言葉を投げかけます。でも、その言葉はただキツイだけではなく、真理をついているような…
アバラは、助けた少女を通して、このマミコさんの言葉に救われたともいえます。
うーん、マミコさん、気になる!
「肋骨さん」も連載として読んでみたくなるような短編でした。
「蝿庭のジグザグ」(はえにわのジグザグ)の内容やあらすじ
主人公である「じぐざぐ」は、花を愛する解術屋(かいじゅつや)。
解術屋とは、呪いを解くことを仕事としている。
今回のターゲットは、呪いの言霊によって依頼人の要件を満たす呪殺屋(じゅさつや)の青年だった。
1人あたり10万円で、どんな依頼も受けていた青年のせいで、1か月に21件の首つりが発生していた。
呪殺屋の青年の呪力を奪い、依頼主もこらしめたじぐざぐ。
今回の首つり事件は解決したものの、じぐざぐの「人間ってそう簡単には悔い改めたりせんからね」という言葉にある通り、解術屋の仕事はなかなかなくなくなりそうにない。
「蝿庭のジグザグ」(はえにわのジグザグ)の感想
どの短編にも同じ感想で恐縮ですが、この「蝿庭のジグザグ」の続きも読みたいです。
じぐざぐがなぜ人助けのような解術屋をしているのかというと、人助けをしないと命にかかわる呪いをかけられたからだそうな。
じぐざぐに呪いをかけたのは誰なのか(実はあとがきで母との解説あり)、じぐざぐはなぜこんなに花を愛でているのか、「花婆」とじぐざぐの関係など、このお話も気になる点がいっぱいです。
連載用のネームを無理やり読み切りにしたらしく、作者である吾峠先生も、まだまだ描き足りない部分があったようです。
まとめ:「吾峠呼世晴短編集」全体の感想
作者である吾峠呼世晴先生自ら、この短編集について「未熟」「恥ずかしい」「何度か読み返さなければ意味が分からない」とおっしゃっています。
わたしも「鬼滅の刃」全23巻と比べると、確かに「読み足りない」というか、「もっとここのところを詳しく知りたかった」という感想を持ちました。(ページ数が全然ちがうので当たり前です)
しかし、この作品集には「鬼滅の刃」に通ずるものが、たしかにあります。「鬼滅の刃」が好きな人はきっと楽しめる作品であろうと思います。



「鬼滅の刃」好きさんだけではなく、「呪術廻戦」や冨樫義博先生の「レベルE」好きさんにもおすすめ!
「鬼滅の刃」や吾峠呼世晴先生のことをもっと知りたい方はぜひ一度読んでみてください。


この記事をお読みいただき、ありがとうございます。